子供の「将来なりたい職業」調査
- Masanobu Matsuura
- 2019年9月7日
- 読了時間: 3分
自分も人の親になり、不慣れながら日々なんとか「父親業」をこなしているからでしょうか、最近では子供の教育や子供に関するニュース(育児放棄や児童虐待の問題)に目が向くようになりました。今もし自分が学部生であったならば、大学院で社会学や教育学を専攻していたかもしれません(笑)。
さて、2019年8月「ソニー生命」の調査によれば、「将来なりたい職業」について、中学生男子部門では「YouTuber」が第1位、2位以降に「プロeスポーツプレイヤー」「ゲームクリエイター」「ITエンジニア・プログラマー」がランクインしたそうです。ちなみに、子供たちにとって、現代の大人は 中学生の約85%・高校生の約89%が「疲れている」と答え、中学生の約92%、高校生の約94%が「大変そう」だと考えており、日本の子供たちはポジティブな視点から職業を捉えていないことが読み取れます。ちなみに、同時期に行われた韓国のある調査(ソウル市の中学生1370人を対象にした調査、2019年9月)では「10名中4名が将来の夢を見出せず」、職業では「公務員が1位」に選ばれる結果となりました。「失われた20年」最中の日本の姿が重なって見えるのは私だけでしょうか。
미디어라이프 ‘서울시 중학생 대상 진로·직업 인식 여론조사’
他方で、子育て世代の親たちの多くは、子供がYoutuber等の職業に就くことに反対しているそうです。その理由として、「マナーや一般常識が育たない」「職業が不安定である」などがよく挙げられているそうで、各種調査によれば、親子間でのキャリアに対するイメージ・ギャップがここ数年高止まりしている状況です。
さて、上記のような職業に対する調査結果をニュースで読む際に、私たちが気に掛けるべきポイントは何でしょうか。私が思うのは、職業には単にテクニカルな意味での職業だけでなく、人々の働き方や生き方に対する考え方が内包されている点です。言うまでもないことですが、「職業」には、個々人の衣・食・住を最低限まなかなうという意味において生計維持としての経済的機能以外にも、社会の一役を担うことで帰属意識を付与する社会的機能がありますし、人間として生まれたからには自己の能力や個性を発揮させるという自己実現の機能があります。このあたりについては、カルバンによる宗教倫理と職業倫理の結合のお話や、マルクスの自己実現論、マズローの「5段階欲求」に関する書籍なんかを読むと大いに勉強になります。
概説書を一読するのも良いですね。
こうした観点から子供たちが選ぶ職業リストを眺めていると、現代の日本では自由な働き方や人生の時間の使い方に対する感覚が変化してきているように思います。ある程度のリスクを取ったうえで自分が好きなことを追究したい、自己の能力や個性を発揮させる欲求が高まっているとも言えるでしょうし、情報革命×グローバル化の影響により、個々人の幸福を具現化する環境がこれまでより整備されてきたことも関係しているでしょう。もちろん、子供の視野は大人より狭く、まだまだ職業の種類について知識が不足していますし、リスクの全体像を必ずしも正確に把握しているとは思いませんが、子供の職業観は特定の国家や社会を映し出す鏡でありますので、今後こうした動きがさらに加速するのかどうか気になるところです。
Comments