最近の金正恩政権の懸案材料
- Masanobu Matsuura
- 2020年1月30日
- 読了時間: 2分
最近、金正恩が心臓手術を受けたのではないかという、所謂「心臓手術説」がメディアや専門家の間で注目されています。また、脱北者の証言として、金正恩が労働党の幹部(及びその子弟)を地方に移住させるよう指示しているとの報道もあります。
政府が需要と供給を公式的に管理する「計画経済」を建前に掲げる以上、都市部(主に平壌)への配給制度が維持されているのか否かは、金正恩政権の政治的安定性を分析する上で、大切な指標のひとつです。
ちなみに、健康不安説自体は、祖父の金日成時代から周辺国が高い関心を持っており、米国の場合、要職者が訪朝する際に、外科医を帯同して政治リーダーの健康状態や予想される寿命を算出しています。このあたりのエピソードは、 ドン・オーバードファー著『二つのコリア』に詳しく記されています。
最近ですと、2014年に、フランスのリヨン大学付属病院の心臓外科医が、金正恩の治療のために、訪朝したとの報道もありました。いずれにせよ、国内的には大きな懸念材料でしょう。
金正恩にとってタイミングが悪いのは、中国・武漢で発生しているコロナウィルス問題です。北朝鮮外務省からの通告によって、1月28日在北朝鮮ロシア大使館が発表したところによれば、北朝鮮は新型コロナウイルスの感染防止策として、中国から入国したすべての外国人に対して1カ月の隔離措置を取りました。
中国を経由した在日朝鮮人の訪朝についても、当面の間は受け入れないことを総連に伝えましたので、事態を深刻に受け止めていることが分かります。こうした措置は、北朝鮮国内の脆弱な公衆衛生の水準や医療体制を考えれば当然の判断である一方、金正恩の肝入りで主導する「観光事業」にとっては大きな打撃です。コロナウィルス問題がどれだけ長引くのかも争点のひとつになるでしょう。
こうした中、1月30日に発表された「政令:朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議常任委員会」では、「社会主義遵法気風」を守ることが強調されており、治安・体制の維持に努めていることが読み取れます。北朝鮮核・ミサイル問題をめぐる米朝交渉では国際制裁に注目が行きがちですが、上述したような、国内の政治・社会体制上の諸般の懸念材料にも、目配せをする必要がありそうです。
参考
「조선민주주의인민공화국 최고인민회의 상임위원회 정령」『労働新聞』2020年1月30日
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