スティーヴン・ヴァン エヴェラ著、 野口 和彦 (翻訳), 渡辺 紫乃 (翻訳)『政治学のリサーチ・メソッド』
- Masanobu Matsuura
- 2019年5月13日
- 読了時間: 2分
更新日:2019年8月9日
本書は、米国の多くの大学院で採用されているGuide to Methods for Students of Political Scienceの訳書です。
社会科学の方法論とは何か。どうすれば歴史が歴史事例になり、政治学の分析枠組みから考察することができるのか。私は博士論文の中間プロポーザルをする際、かなり悩みましたが、道しるべとなってくれたのが、エヴェラ『政治学のリサーチ・メソッド』(2009、勁草書房)でした。
個人的な印象なのですが、日本の政治学系の大学院では、米国のアカデミアと比べると、理論や仮説の立て方について、大学院のコースワークであまり体系立てて教育を施していないという印象があります。一方、(幸か不幸か)米国のアカデミアの影響をモロに受けた韓国の大学院では、大学院生が自分の研究テーマを深める作業と並行して、コースワークでみっちり方法論を学ぶようカリキュラムが編成されています。
その際に、本書で述べられているように、政治学上の「変数」とは何か。よい理論の条件とは何か。理論はどのように構築され、分析者は理論をどう検証するのか。さらには、事例選択の基準や、事例研究を使ってどう理論を構築するのか。こうしたことを学びながら、博士論文の方法論や、自分の強みや弱みを体系的に理解することができるようになると思います。全体の方法論の中で、自分の研究を位置付けることは、査読を含み、他の研究者からの批判を回避するためにも有益です。
方法論の学習は、先行研究を建設的に批判するうえで欠かすことのできない「知の作法」のようなものですが、本書では平易な言葉で読者に語り掛けながら説明してくれています。
また、意外に侮れないのが、第6章「職業倫理」
です。現在、大学教員として同僚・職員・学生と接する中で、この章を大学院生時代に読んでおいて良かったなぁと想い出すこともあります。これから大学院で政治学や国際政治学を学ぶ方はもちろん、博士論文を執筆したい方にとって必読書であると思います。

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